2019.01.24 Thursday
くすんだ月夜。
外に出たら白い月が出ていた。
夜が明けるまでにはまだ小一時間はあるだろうか。
真夜中ではないが朝でもない。
人の気配も無けりゃ、車さえ全く通らない。
身の置き場のないそんな半端な時間帯。
吐く息は白く、さっきから鼻の奥がツンとして痛い。
「駅まで走ろうか」
何も考えずに走ることにした。
走っている間はあなたの事など考えないことにした。
走っている間は頭の中で音楽を鳴らさないことにした。
走っている間はあなたの事なんて考えないことにした。
走っている間は何も口ずさまないことにした。
走っている間はあなたの事すら考えないことにした。
走っている間は思いを馳せないことにした。
走っている間は走っていることすら考えないことにした。
「どこに向かっていたんだっけ?」
ふと顔を上げると、
白い月は真正面に移動していた。
月に向かって走る。
すると月は次第に大きく大きく膨らんでいくようで、
ついには月に飲み込まれてしまうんじゃないかという錯覚。
ぼくは走るのをやめてしまった。
静かなこの路地にぼくの乱れた呼吸が響き渡った。
そうだあなたに会いに行こう。
決めた。
月が出ているうちに会いに行くんだ。
決めた。
それでぼくは白い月に向かって再び走り出したんだ。