2012.11.29 Thursday
キャットフィッシュ ブルーズ
(そぞろ歩き〜目黒区五本木)
もしも今生きてたら70歳なんだぜ、とジミヘンの曲ばかりをかけまくる酒屋の兄ちゃん。
今日もあなたはストーンフリーだ。ヴードゥーチャイルドだ。
ノイズ混じりのイカれた拡声器で街頭演説している、
40代後半から50代前半くらいと思われるひょろひょろで黒眼鏡、黒スーツの男。
自信満々に語ってはいるんだけれど、
いかんせんノイズが酷く何言ってんのか解らないよ。
それに黒眼鏡の奥の瞳がやたらと鋭くて怖いよ。
交差点の死角、あの角にはいつも白バイが隠れているのをぼくは知っている。
今日も一時停止を怠ったドライバーをひとり、またひとり、と捕獲してゆくんだ。
そしてぼくはまた遭遇するのだ。
白バイに捕獲された哀れな顔の運転手を。
そして薄ら笑い、いや、含み笑いの警官を。
そんな厳戒態勢のこの交差点で事故が起きた!
この交差点に未来は無い。
きっと無い。
するってえと、何だい。
おまえさんはもうここには来ないってえのかい。
よおしそこまで云うなら、とっとと消え失せな。
オレの目の黒いうちは二度とこの敷居をまたがせないから覚悟しておきやがれぇ。
映画か小説にしか出て来ないような江戸弁。
商店街のどこからか聴こえてきた。
夫婦喧嘩か、親子喧嘩か。
ここには未来はきっとある。ような気がした。
寒風でひび割れた手の甲が痛い。
手のひらも痛い。
そんなちっぽけな事を気にしてとぼとぼ歩いていたら、
乗る筈だった電車に乗り損ねた。
小春日和の穏やかな午後。
可笑しさも、憂鬱も、憤りも、楽しみも、悲しみも、
どれもいつかは枯れて散り行く。