2018.02.25 Sunday
ハル、ニガツ。
風の中に答えはあるのだろうか。
あなたの素振りにヒントを見いだしたぼくは、
微笑むわけでもなく手をポンと叩くわけでもなく、
したくもない咳払いを二つ三つしながら、
ゆっくりその場を去ったのだった。
きっとぼくは落ちついて見えたのだろう。
しかし実のところ落ちついてなんかいないのだ。
心の動揺をこうしていつまでも隠しきれる訳はないと感じたぼくは、
素早く家中の窓という窓を開けるやいなや、
二月のまっさらな冷気を肺の奥底に落としこんだのだった。
ひらひら舞い続けるカーテンは少し邪魔だったし、
それに壁に反射する薄明かりに酔わされ、
次第に寝不足気味のぼくの身体は、
非現実の世界へ滑り落ちていった。
ははん、このまま目が覚めなかったらどこに連れて行かれるのだろうか。
しかしながら凡人のぼくには目覚めなどすぐにやって来るのだ。
通りの向こうで鳴いたヒヨドリの金切り声で現実に引き戻されたぼくは、
夕暮れて橙色に染まっていく襖(ふすま)が、
子供の時に近所の寺で坊主にもらったあの甘茶の色に似ていて、
とても薄気味悪かった。
そのことくらいしか憶えていない。
ああ、春二月。